東京高等裁判所 昭和27年(う)4243号 判決
被告人 藤田庄一郎
〔抄 録〕
第三点について。
原判決挙示の証拠を綜合すれば、A、Bの受けた本件傷害と被告人の暴行との間に相当因果関係の存することを認めることができる。そして傷害罪の成立には傷害の原因である暴行についての意思があれば足り、その暴行は傷害の結果を生ずることあるべき性質を有するものであることを認識するを要しない。蓋し暴行は、ややもすれば傷害の結果を伴うことが多いので、法は傷害罪を結果犯として被告人にその罪責を負担させるものであるから、被告人において暴行についての認識がある限り、その暴行が延いて如何なる傷害を生ずべき性質のものであるかを知らないとしても、傷害罪に問擬するを妨げない。傷害罪の結果の発生について予見し得べきことを条件とする立法の下においては所論のように傷害の結果の発生についての認識を必要とするけれども、わが国刑法はこの主義を採るものではないから、所論の主張は採用できない。この解釈はもとより新憲法の下においても妥当するものであつて、何等憲法第十八条、第三十一条に違反するものではない。従つて、たとえ所論のように被告人がA、Bに、本件傷害を加える目的又は認識がなかつたものとしても、傷害の原因である暴行についての意思の存在が認められるのであるから、原判決が刑法第二百四条を適用処断しているのは相当であり、原判決には所論のような擬律錯誤又は理由不備の違法なく、論旨は理由がない。